はじめに
前回の記事では、13年間勤めた会社で直属の上司へ退職を伝えた日のことを書きました。

あの日が一番つらいと思っていましたが、本当に心が揺れたのは、その後でした。
退職の話が少しずつ社内へ広まり、一緒に働いてきた同僚や部下、お世話になった部署へ一人ひとり報告していく日々。
驚く人、応援してくれる人、納得できない人。
その反応を見て初めて、「本当に会社を辞めるんだ」という実感が湧いてきました。
今回は、退職を伝えた後に起きた出来事を、当時の気持ちとともに振り返ります。
上司から退職が共有され、少しずつ社内へ広まっていった
直属の上司へ退職を伝えたあと、管理職の間で正式に退職の話が共有されました。
それから数日かけて、少しずつ部署内にも話が広まっていきます。
まだ知らない人もいれば、すでに耳にしている人もいました。
だからこそ、お世話になった人には、自分の口で伝えたい。
そう決めて、一人ずつ時間をもらって話をするようにしました。
同僚へ退職を伝えた時の反応
社内で唯一、退職を先に伝えた同僚がいました。
13年間、一緒に働いてきた仲です。
普段から頻繁に飲みに行くような関係ではありませんでしたが、査定や評定では何度も比較され、お互いをライバルとして切磋琢磨してきました。
休憩時間に呼び出し、退職することを伝えると、
最初は頭を抱え、
「マジか……。」
と驚いた様子でした。
しばらく沈黙したあと、笑いながらこう言ってくれました。
「でも、お前なら、そのうち出ていくと思ってた。」
その言葉を聞いた瞬間、不思議と肩の力が抜けました。
退職という大きな決断を理解してもらえたことが、本当に心強かったんです。
そして最後に、
「半年に一回くらいは近況報告しながら飲みに行こう。」
そう言ってくれました。
会社を辞めても、人とのつながりは終わらない。
そう思えた瞬間でした。
前工程の部署でもらった、忘れられない一言
退職日が近づくにつれ、お世話になった部署へ挨拶に回りました。
その中でも、今でも忘れられない言葉があります。
以前、品質や工程改善について何度も意見を交わしてきた前工程の部署です。
良い製品を作るため、ときには厳しいお願いをしたこともありました。
だからこそ、最後の挨拶は少し緊張していました。
「今までありがとうございました。」
そう伝えると、返ってきたのは思いもしなかった言葉でした。
「もっと一緒に仕事をしたかった。」
胸が熱くなりました。
仕事では何度も意見がぶつかりました。
でも、お互いに目指していたのは「より良い製品を作ること」。
厳しいことを言うことも多かった自分を、そんなふうに受け止めてくれていたことが、本当にうれしかったです。
今でも、この言葉は忘れられません。
部下へ退職を伝えた時、一番つらかった会話
同僚へ伝える時も緊張しました。
でも、一番言葉を選んだのは部下へ退職を伝える時でした。
その後輩は、私が後工程へ引き上げ、一緒により良い製品を作ろうと育ててきた存在です。
これからもっと良いチームを作っていこう。
そう思っていた矢先の退職でした。
退職を伝えると、後輩はすぐに問いかけてきました。
「なんで今なんですか。」
「せっかくこれからじゃないですか。」
期待してくれていたことが伝わるからこそ、その言葉は胸に刺さりました。
それでも私は、こう答えました。
「これは自分の人生だから。」
「今、このタイミングで転職しようと思った。」
「誰かの状況や環境じゃなく、自分で決めたことなんだ。」
今振り返ると、少し冷たい言い方だったかもしれません。
もっと違う伝え方があったのかもしれない。
それでも、あの時の私は、自分で決めた人生を、自分の意思で歩みたいという気持ちだけは曲げたくありませんでした。
後輩は最後まで納得していませんでした。
でも、それだけ本気で一緒に仕事をしたいと思ってくれていた。
そう思うと、今でも感謝の気持ちでいっぱいです。
上司から最後にもらった言葉
退職が社内へ広まり、引き継ぎも始まった頃。
直属の上司から言われた言葉があります。
「覚悟もして、自分で決めたことなんだろ?」
私は迷わず、
「はい。」
と答えました。
すると上司はこう続けました。
「誰かに流されて決めたことじゃないなら、最後まで言い訳せず、自分でやり切りなさい。」
「お前は、それができる人だ。」
その言葉を聞いた時、自分の決断を信じてもらえた気がしました。
退職を認めてもらえたというより、「お前なら大丈夫だ」と背中を押してもらえた。
13年間お世話になった上司からのこの言葉は、転職した今でも仕事で迷った時に思い出す、大切な言葉です。
少しずつ「最後」が増えていく日々
退職を伝える人が増えるたびに、当たり前だった日常が少しずつ変わっていきました。
「これが最後の会議か。」
「この人と仕事をするのも、あと少しか。」
そんなことを考える時間が増えていきます。
退職日まではまだ時間があります。
でも、自分の中では少しずつ会社との別れが始まっていました。
まとめ
退職は、会社を辞める手続きだけではありません。
一緒に働いてきた仲間へ、自分の口で感謝を伝える時間でもあります。
驚いてくれた同僚。
「もっと一緒に仕事をしたかった」と言ってくれた他部署の方。
納得できないと言ってくれた後輩。
そして、最後まで自分を信じて送り出してくれた上司。
この一つひとつの言葉が、13年間という時間の重みを改めて感じさせてくれました。
次回は、引き継ぎや有給消化、退職手続きで実際に苦労したことについて書こうと思います。
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