はじめに
内定をもらった時、「これで終わった」と思っていました。
でも違いました。
転職活動で一番つらかったのは、書類選考でも面接でもありませんでした。
13年間勤めた会社に「退職します」と伝えた、あの日です。
転職先が決まり、「やっと終わった」と思っていたはずなのに、退職を伝える前日になると不安が一気に押し寄せてきました。
本当に辞めるんだ。
もう後戻りはできない。
そんな現実を突きつけられた瞬間でもありました。
今回は、直属の上司へ退職を伝えた日のことを、当時の気持ちとともに振り返ります。
エージェントから言われた「一番つらいのは退職交渉です」
退職を伝える前日、転職エージェントから電話がありました。
「転職活動の中で、一番つらいのは退職交渉ですよ。」
「覚悟を持って、一日で終わらせるつもりで行ってきてください。」
その言葉を聞いた瞬間、胸がドキッとしました。
転職活動は何か月も覚悟を持って取り組んできました。
書類で落ち、面接で失敗し、それでも前に進んできました。
でも、「会社を辞める」という現実だけは、どこかまだ実感がありませんでした。
その電話を切ったあと、
「いよいよ13年間勤めた会社を辞めるんだ。」
そう思うと、不安と緊張が一気に押し寄せてきました。
当日の朝、退職を伝えるまでの心境
翌日、いつも通り会社へ向かいました。
でも、その日はまったく「いつも通り」ではありませんでした。
上司の顔を見るたびに、
「今日、伝えなきゃ。」
そのことばかり考えていました。
仕事をしていても、どこか落ち着きません。
出社して最初にやったことは、上司のスケジュールを確認することでした。
午後に1時間だけ空いている時間を見つけ、
「少しお時間をいただけますか。」
と面談をお願いしました。
その時間が近づくにつれて、心臓がどんどん速くなるのが分かりました。
直属の上司へ退職を伝えた瞬間
会議室に入り、少しだけ沈黙が流れました。
私は心の中で一つだけ決めていたことがありました。
「最後まで上司の目を見て伝えよう。」
相談ではありません。
引き止めてもらうためでもありません。
自分で決めた退職を、自分の言葉で伝える。
それだけは最後まで貫こうと思っていました。
そして、私はゆっくりと言いました。
「転職先が決まりました。」
上司は数秒間、何も言いませんでした。
状況を理解するまで時間がかかったのだと思います。
もう一度、自分の意思を伝えると、上司は静かにうなずきました。
直属の上司は、感情を隠さない人でした。
私の話を聞きながら、少しずつ目に涙を浮かべ、声も震えていました。
その姿を見た瞬間、
胸の奥がズンと重くなりました。
「本当に辞めるんだ。」
その現実を、自分自身も初めて実感した瞬間でした。
その後、上司だけでなく、関係する方々にも退職を伝えていきました。
その時も、私が決めていたことは一つだけでした。
必ず相手の目を見て話すこと。
覚悟を決めて退職を選んだ以上、中途半端な伝え方だけはしたくありませんでした。
目を見て話すことで、
「相談」ではなく、
「退職の報告なんだ。」
その覚悟が相手にも伝わったように思います。
冗談でも、
迷っているわけでもない。
自分で決めた人生だからこそ、最後まで誠実に伝えよう。
そんな気持ちで、一人ひとりに話をしました。
引き止め交渉と上司の反応
その後、上司からは
「事前に相談くらいはしてほしかった。」
と言われました。
その言葉は正直、胸に刺さりました。
13年間お世話になった上司だからこそ、申し訳ない気持ちもありました。
でも私は、相談ではなく「報告」を選びました。
もし相談していたら、気持ちが揺らいでしまったかもしれません。
自分で決めた道だからこそ、自分の意思で進みたかったんです。
その後は無理に引き止められることもなく、
「覚悟が決まっている人間に何を言っても気持ちは変わらないだろう。」
そんな空気を感じました。
そして驚いたことに、その後も上司は今までと変わらず接してくれました。
その気遣いが、本当にありがたかったです。
同僚へ退職を伝えた時の反応
同僚に伝えた時の反応
社内で唯一、退職を先に伝えた同僚がいました。
13年間、一緒に働いてきた仲です。
普段から飲みに行くような関係ではありませんでしたが、査定や評定では何度も比較され、お互いを意識しながら切磋琢磨してきた存在でした。
休憩時間に時間をもらい、退職することを伝えると、
最初は頭を抱えて、
「マジか……。」
と、かなり驚いた様子でした。
しばらく沈黙したあと、笑いながらこう言ってくれました。
「でも、お前なら、そのうち出ていくと思ってた。」
その言葉を聞いた瞬間、不思議と肩の力が抜けました。
退職という大きな決断を理解してもらえたことが、本当に心強かったんです。
13年間、お互いをライバルとして意識しながら仕事をしてきた相手だからこそ、その一言には重みがありました。
そして最後に、
「これからも半年に一回くらいは近況報告しながら飲みに行こう。」
そう言ってくれました。
退職すれば会社で会うことはなくなります。
それでも、人とのつながりは終わるわけじゃない。
その言葉が本当にうれしくて、今でも忘れられません。
転職は会社を辞めることですが、会社は辞めても、人との縁は辞める必要はない。
この同僚との約束は、退職した今でも大切なつながりとして続いています。
退職を伝えた帰り道で感じたこと
退職を伝えた帰り道。
初夏の暑さがまだ残る夕方でした。
つい数時間前まで胸を締め付けていた緊張はなくなり、無事に伝えられたという安心感に包まれていました。
でも、その安心感とは別に、胸の奥から込み上げてきたのは寂しさでした。
いつも通っている帰り道なのに、その日は少し違って見えました。
「この道を通うのも、あと何回なんだろう。」
信号も、お店も、景色も何一つ変わっていません。
変わったのは、自分だけでした。
そう思うと、自然と自転車をこぐ足がゆっくりになっていました。
13年間。
毎日のように通った道です。
長いようで、本当にあっという間でした。
正式な退職日までは、まだ数か月あります。
それでも、自分の中では一つの区切りがついたような気がしました。
会社の門を出るとき、
私は誰に聞かせるでもなく、小さな声でこうつぶやいていました。
「ありがとうございました。」
13年間お世話になった会社への感謝。
一緒に働いてきた仲間への感謝。
そして、自分をここまで育ててくれた時間への感謝。
寂しさはありました。
でも、不思議と後悔はありませんでした。
自分で考え、自分で決めた道だから。
この日、自転車をゆっくりこぎながら見た夕方の景色は、今でも鮮明に覚えています。
まとめ|退職を伝える日は転職活動最大の山場だった
退職を伝える瞬間は、転職活動の中で一番勇気が必要でした。
書類選考や面接とは違い、自分の口で13年間お世話になった会社へ「辞めます」と伝える。
その重みは、想像以上でした。
でも今振り返ると、退職を伝えることは、
会社との別れではありませんでした。
13年間積み重ねてきた時間に区切りをつけ、
新しい人生へ踏み出すための第一歩でした。
今でも、あの日会社の門を出るときにつぶやいた
「ありがとうございました。」
その一言だけは、はっきり覚えています。
もし今、退職を伝えることが怖いと思っている人がいるなら、大丈夫です。
勇気を出して伝えた先には、新しい景色が待っています。

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